チョコレート製造の知識③ テンパリング工程

新しいチョコレート研究開発

前回「チョコレート製造の知識②_精錬コンチング工程」で、
チョコレート製造者にとって通常の姿である流動性を持ったチョコレートまで紹介しました!

今回は、みなさんがよく目にするピカピカの固形チョコレートにするために必要な工程、

「テンパリング」です!


(みなさんの期待)

テンパリングって、聞いたことがあります!
ショコラティエが職人技として、テレビでよく見てました!
でも、何でその工程が必要かよく分かってません…

(Satoshi)

「職人技」として知られているテンパリング…、まさにその通りです!
大丈夫です!これからテンパリングのメカニズムも踏まえて説明いたします!

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テンパリング工程とは?

チョコレートの温度を調節して、チョコレートに含まれるココアバターを「安定した結晶」にする工程が「テンパリング」です。

(みなさんの疑問)

え!?「安定した結晶」ってどういうことですかぁ!?

(Satoshi)

お、落ち着いてください!チョコレートの成分に含まれるココアバターは、砂糖や粉乳などどの原材料と比較して多めです。
このココアバターは「植物油脂」なので、冷却すると固まります。
つまり、「安定した結晶」とは、「製造者が狙って油脂の固まり方をコントロール」することを意味します!

(みなさんの疑問)

「油脂の固まり方をコントロール」…!
なんだかかっこいいですね!でもどうやってコントロールするんですか!?ゴゴゴゴゴ…

(Satoshi)

「コントロール」の肝は、「温度調整」です!!!!

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結晶とは?

チョコレートの固体状態は、チョコレートを構成するココアバター(油脂)が結晶化しているからです。

「結晶」とは、「分子が規則的に並んだ状態」のことです。その結晶の形は、とても多く、ココアバターは6つあります。

ココアバターの結晶形6つは、油脂の融けやすさと安定の順で「Ⅰ~Ⅵ型」が知られています。

「安定、不安定」とは世の中の物質は安定に向かって変化しており、
例えば「Ⅰ型」のような不安定結晶形は、より安定な「Ⅱ型」結晶形へ変化する時間が早いので「不安定型」と呼んでいます。
「安定型」は他の結晶形と違って、より安定した形へ長い時間かけて変化していくので、外から見るとその形状を保っているように見えるので、「安定型」と呼んでいます。

Ⅰ型:17.3℃(不安定)

Ⅱ型:23.3℃(不安定)

Ⅲ型:25.5℃(不安定)

Ⅳ型:27.5℃(不安定)

Ⅴ型:33.8℃(準安定)

Ⅵ型:36.3℃(安定)

6つの結晶形の中で、チョコレートに適した結晶形は、「Ⅴ型」のみです!!

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「Ⅴ型」へ誘う最適な温度調整法

1.チョコレートを50~55℃に加熱して完全に融解させる。
2.チョコレートの温度を27~29℃まで下げて、Ⅳ型を生成させる。
3.チョコレート温度を31~32℃まで上げてⅣ型からⅤ型へ変身させる。(この時点のⅤ型は、核と呼ばれるとても小さな結晶である)
4.チョコレート成型時に冷やし固めて、核状態のⅤ型を成長させて大きなⅤ型結晶にする。

テンパリングは「攪拌」がポイント!
テンパリングで常に意識すべきは、チョコレート全体に均一な温度にするために「攪拌」させることです!
全体の温度が揃っていないと、ピカピカも輝くチョコレートにはなりません!
「攪拌」にはもう一つ役割があり、攪拌によってチョコレート全体に「衝撃を与える」ことで、「3.」でⅣ型→Ⅴ型へ変身させるための「きっかけ」を作ります。
仮に、温度だけ調整してもココアバターの結晶はⅣ型からⅤ型にはならなかった経験があるので、「攪拌」は大事だと知ることができました!

チョコレート製造の大敵!ブルーム!

チョコレートは、ココアバターの結晶がⅤ型の結晶に統一されている場合のみ、冷やし固めた後に「艶のあるチョコレート」に仕上がります。
逆に不安定なⅣ型結晶が混ざっていると、チョコレートがきちんと固まらず、「パキッ」とした歯触りにならないだけではなく、艶の無い見た目のチョコレートになってしまいます。
見た目が、白く見えます。
この悪い状態を、「ブルーム(ファットブルーム)」と呼びます。

★ドキドキ!?チョコレート製造者あるある!
工場なので、もちろん温度制御や攪拌は機械の設定をすれば自動でⅤ型結晶のチョコレートが配管から出てきます。
そのチョコレートの状態を、しばしば「テンパリングがとれたチョコレート」と呼びます。しかし、稀に配管から「テンパリングがとれていないチョコレート」が出てくる場合があります。
「テンパリングがとれていないチョコレート」はそのまま冷やし固めると「ブルーム」になってしまいます。
配管から出てくるチョコレートは、ペースト状態なので、一見、見分けがつきませんが、
毎日毎日チョコレートがテンパリングされた状態のペースト見ていると、次第に「今日はおかしいな!」と気づくことができます。
「ペーストの流動性・ペーストの艶・ペーストを食べたときの冷涼感」という職人の感覚で見極めることができます。
テンパーメーターと呼ばれるテンパリング状態を数値化(小数点第1位まで表せる)する優れた機械がありますが、
チョコレートを観察ばかりしていたせいか、ペーストの状態を見て、機械が出す数値を連続で言い当てたことがあります!!
チョコレートメーカーを経験してきて得た観察力の自信になりました!(えっへん!) 




Ⅴ型結晶で固まったチョコレート

・艶がある
・型に流したチョコレートを冷やし固めた後、収縮し方から剥離できる。
・口どけはスッと溶ける
・パキッと割れる(スナップ性がある)
・ブルームができにくい

テンパリングを失敗したチョコレート

・艶が無い
・固まりにくいので型から剥離しない
・口どけが悪い
・スナップ性がなく、軟らかい
・保管中に見た目が白く見えるブルーム現象がすぐに現れる

★ドキドキ!?チョコレート製造者あるある!
テンパリングをこなして型にチョコレートを流し込んだ後、冷やし固めたチョコレートを室内へ取り出したときでした。
急な仕事が入ったので、型から取り出したチョコを置いておきました。
仕事が一息ついたので、チョコの様子を見ると、白くなっていたんです!!!!!
これは、「シュガーブルーム」と呼ばれるブルームの一種で、冷蔵庫から室内に取り出したばかりだと、チョコの周りの空気が結露して水が張り付きます。
そうすると、チョコ中の砂糖が表面に溶けだして、乾燥すると砂糖の白さが目立った状態になった
ということでした…
なので、また作り直しで残業せざるを得ませんでした…(;’∀’)笑
 

チョコレート製造の終わりに

チョコレート製造者のあるあるを交えたチョコレートの製の一連の流れを紹介できてうれしかったです!!
チョコレートの良いところは、テンパリングが失敗してもまた溶かして固めなおせる、つまり「やり直せる」ところです。


他のスナック菓子のようなお菓子は途中で失敗したらやり直すことが困難だと思います。

チョコレート製造はテンパリング後、モールド成型やアーモンドなどにコーティングなどに使用されます。

チョコレート製造者の気持ちをみなさんと共有できて良かったです!
もしみなさんがチョコレートの現場で働くときの参考となれば良いなと思います!

次回のお話

チョコレートに肝心なのは、「植物油脂」です!
今までお話してきたのは「ココアバター」ですが、とても高価な油脂となっています。

近年、ココアバターの代わりになり、一部置き換えられる油脂が安価で手に入ります!

次回は、そのココアバターココアバター代替脂について、それが使われているチョコレート菓子も一緒に紹介しようと思います!
チョコレート製造者のあるあるも交えて!!笑

乞うご期待!!




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