みなさん大好きなチョコボール!
そんなチョコボールはナッツなどにチョコをコーティングするのですが、それをパン・コーティング製法と呼びます!
別名、レボルビングパン(略してレボパン)と私は、呼んでいました!
私のチョコレート研究と製造ラインの経験談を含めて、みなさまにチョコボールにしていくための技術を知ってもらい、食べるときに、もっと楽しんでもらえるように紹介しようと思います!!
パン・コーティング製法とは?
回転釜(レボルビングパン)という機械にナッツやキャンデーなどを入れて、釜の外からチョコレートを掛けていき、丸いボールのような形にしていくことを
パン・コーティング製法と言います。(パンワーク、釜がけなどともいいます)
パン・コーティング製法にて、チョコレートコーティングされるナッツやキャンデーのことを、「センター」といいます。
パン・コーティング製法の流れ
①傾斜を付けた回転釜にセンターとなる素材入れる
傾斜を付けた回転釜にセンターとなる素材を投入して、回転を加えます。
釜のイメージは巨大なドラム式洗濯機であり、それは銅製のものが多かったです!
試作では、バスケットボールくらいの大きさの釜でしたが、製造ラインでは、一度に2トンもの製品が作れる巨大な回転釜があります!
センターは形状が重要です!
特にスルドイ角があるものは避けるべきで、チョコレートがコーティングしにくくて、チョコレートが透けてセンターが露わになってしまいやすいです。
また、表面の凸凹が多いとコーティング中にチョコレートが凹面上に溜まり、双子と呼ばれる他のセンターとくっついた状態になってしまいがちです。
アーモンドなど、表面の凸凹が少なく、丸みを帯びた形状であれば、パン・コーティング製法しやすいといえます!
②チョコレートをセンターにコーティングしていく。
スプレーガンに液状のチョコレートを充填させて、一定の間隔でノズルからブシャーっと噴霧して、センターにコーティングします!
この作業は、ブロワーで冷風を釜内に吹き付けて、チョコを冷やし固めながら行います。
ブロワーは、製造ラインだと温湿度調整された空気を吹き込む配管が設置されていますが、
試作ではドライヤーを使用しておりました笑
③センターの回りのチョコの層が厚くする。
回転釜の傾斜と回転によってセンターの回りにチョコレートが付着し、徐々にセンターのチョコの層が厚くなっていきます。
④表面が滑らかなボール状になっていきます。
回転釜にチョコが付着したセンター同士がお互いにぶつかり合うことで、表面が滑らかなボール状になっていきます。
初めてパン・コーティング製法を行ったとき、丸くコーティングしているはずなのに、チョコレートがゴツゴツと金平糖のような形になってしまったり、
双子と呼ばれるチョコを掛けたセンター同士がくっ付いてしまう状況を多く生み出してしまったり、失敗ばかりでした…
次第に、ゴツゴツしてしまうのは、センターに冷風を与えすぎて丸くなる前に固まってしまうことに気づき、冷風を入れる適切なタイミングを掴むことで、
ようやく、丸い形へチョコレートをコーティングすることができました!
最初に失敗してしまったチョコは、敢えて捨てずに残しておき、何か仕事で躓いたときに「こんなときもあったが、昔の自分よりかなり成長してる!」と励みにしておりました笑
⑤目標の重量になるまで、チョコレートをセンターにコーティングしていく。
センターにコーティングするチョコレートはテンパータイプ(テンパリングを必要とするチョコ)が使われることが多かったです。
センターにコーティングする前にテンパリングをせずとも、釜の中で自然にテンパリングがとれてしまうらしいのです!
これは、チョコをセンターにコーティングする際は冷風によって冷却されますが、その後そのセンター同士で、ぶつかり合うことで熱が生まれるため、
それがテンパリング工程の中のリヒートの役目を担っているので、自然に釜の中でテンパリングがとれるとのことです!
⑥艶をチョコレートに付けて完成!
艶は主に光沢剤が使われると思います。
光沢剤はシェラックと呼ばれる樹脂状の黄色液体で、アルコール溶液を揮発させると透明被膜を形成し、ピカピカになります。
実は、このシェラックの原料は、ラックカイガラムシの分泌液だというから驚きですよね!!
昆虫を利用しているとはチョコボールは昆虫食の先陣を切っていたといっても過言ではないのでは!?と思いました!
シェラックはとてもベタベタしているので、他の器具に付着してしまうと中々取り除くことはできません!
なので、シェラックが入ったボトルから必要分だけ採取する際は、使い捨て出来るプラスチック製のカップを使用しておりました。
しかし私が新人の頃、そのことを最初は知らなかったので、金属のカップにシェラックを注いでしまい、もったいないことに、そのまま処分することになったことがあります…。
パン・コーティング製法でつくった製品の一部紹介
チョコボール(森永製菓(株))
アーモンドチョコレート((株)明治)
フルーツチョコボール(新宿高野)
最後に
パン・コーティング製法は、私にとっては数あるチョコレートの加工製法の中で最も難しい技術でした。
大きな釜を使う大量生産でも、重量や丸み具合を確認しながらの手作業だったので、体力的にもとても苦労したのを今でも思い出します。
しかし、それだけ製品にかける想いも相当なものでした!
出荷される際は、わが子が旅立つ感覚で、思わず元気でな!と心の中で自分が手掛けた製品に向かって応援しておりました笑
次回のお話
チョコレートの末端の製造方法、成型チョコレート、生チョコレートなどまだまだ経験則から苦労話まで盛り込んで紹介していこうと思います!
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