宇宙食とは何か① | 宇宙食の歴史を探る編

宇宙食調査

今や「宇宙食」と聞くと、昔のチューブ入りの食品とは異なり、

フリーズドライやレトルト食品などへ進化し、地上とほとんど同じものが食べられるような時代というイメージですよね!!

でも、なぜ最初から「宇宙」で「地上」と同じように「食べる」ことを考えなかったのでしょうか?

宇宙環境には何があるのか!?宇宙で食べる難しさとは!?「宇宙食の歴史」を追いたいと思います!

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宇宙食の黎明期 | 最初の宇宙飛行のとき

1961年4月、当時ソ連の軍人、ユーリ・ガガーリン少佐が、ヴォストークによって人類で初めて宇宙飛行士をしました。

ただ、その飛行は地球1周、飛行時間にして1時間48分にだったので、全飛行時間も短く、食事を摂ることはなかったとのことです。

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初期の宇宙食 | ジェミニ計画

初めて宇宙で食事をとったのは、
ガガーリンの宇宙飛行から1年経過後のアメリカの「ジェミニ計画」での飛行が最初です。

ジェミニ計画とは
ジェミニ計画は、ランデブー、ドッキング、宇宙服、船外活動などなど、 アポロ計画を実現するために必要なテクノロジを開発するための計画です。宇宙飛行士と機器が2週間の宇宙飛行に耐えられることを確認することも目的としていたそうです。

この飛行は2週間と長かったので、宇宙で食事することが必要となりました。

しかし!当時は宇宙環境すなわち無重量空間で果たして人間が正常に食事を摂れるのか
食品をうまく飲み込めるのかが分からなかったそうです…!

なので、嚥下(食物を飲み込むこと)に支障がないような「錠剤」「チューブ入りの食事」が開発されました!

(写真はイメージです)

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宇宙食の革命期 | アポロ計画

月までの距離は約37万㎞あり、サターンロケットで月まで3日間の飛行を必要とします。
この長時間の宇宙飛行に備えるためには十分な食料も必要となりました。

アポロ計画とは
1960年代当時、月面に10年以内に人間を着陸させ、地球に安全に戻すという目標のもとに立てられたアメリカの有人宇宙飛行計画です。

この頃には、「無重力下でも人間は普通に嚥下できる」などの宇宙空間での人間の食事に対する知識も蓄積されていたので、
チューブ入りや錠剤の形態でなくてもよいことが分かっておりました。

しかし!宇宙で食事するための制約が多くなりました。

① ロケットに持ち込める荷物は軽いほど良い。
② 無重力で喫食可能なもの(液体がこぼれると空間を漂って回収不能に陥る)
③ 常温で長時間保存可能なもの(宇宙船には食品保存用冷凍庫も冷蔵庫もない)
④ 完全な衛生性(宇宙で食中毒を起こしてはならない)

①~④の制約をクリアするために、NASAではアポロ計画のために、壮大な宇宙食開発計画を立てました。

〇フリーズドライ技術の宇宙食への利用
NASAにいち早く宇宙食製造に利用されたのがフリーズドライ技術です。
フリーズドライ技術は、
食品を低温で凍らせて真空下に置くと、水分が昇華によって飛散し、食品から水分だけが除かれる。
水で戻せば、元の形状が回復する技術です。

重量が軽くなるだけでなく、水分が除かれた状態でも、風味や栄養が保持されるのが利点です。

〇レトルト殺菌技術
レトルト殺菌技術は、食品を気密性の容器に充填して加熱殺菌すれば長期保存できる技術です。
200年以上前にフランス人の二コラ・アペールによって発明され、缶詰として実用化されています。

缶に代わってアルミ袋を用いるのが「レトルトパウチ食品」です。

アルミ袋を用いることで缶詰よりも形態が薄いので、熱の伝わりが速く、中身の食品が短時間で殺菌できることや
缶詰よりも風味の劣化が少ない栄養素の破壊も少ないという利点があります。

〇HACCP (ハサップ)技術の開発
HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point:危害分析重要管理点)がNASAにより開発されました。

HACCPは加工食品を原材料から製造するときに、100個中100個安全であることを保証する方法です。
食品の加工段階、すなわち原料から製造、調理、製品までの各段階を衛生的に管理して、製品の衛生性を確保します。

例えばレトルトパウチ食品の場合、
加圧加熱処理を120℃、4分間の処理が衛生性を確保するために必要な条件であり、全製品にこの条件の処理を行います。

(写真はイメージです)

従来は抜き取り検査という手法を用いていて、
微生物検査を行い、衛生性を確認する方法でしたが、全数を検査しているわけではなく、漏れたものも衛生的であると推定するものでありました。

宇宙食では、従来法であると不安が残るため、HACCPという手法を宇宙食のために開発しました。

HACCPは現在、食品企業でも実施されていますよね!
宇宙技術が日常生活に大きな変革をもたらしています!!

ボーナス宇宙食の採用 | スペースシャトル時代

スペースシャトルの特徴は、大きな荷物室であり、1回に最大25トンの荷物の運搬が可能です。
この運搬能力を生かして、国際宇宙ステーション(ISS)の組み立てが行われました。
 

スペースシャトルとは
スペースシャトルは、より低コストで、繰り返し使用可能な宇宙船として1981〜2011年まで活躍しました。国際宇宙ステーション(ISS)の組み立てやハッブル宇宙望遠鏡をはじめ、多くの成果があります。

その運搬能力のおかげで宇宙食の重量制限が緩和され、「ボーナス食」の採用も始まりました。
アポロ時代のときは、NASAかROSCOSMOS(ロスコスモス:ロシア宇宙局)が提供するもののみでしたが、
「ボーナス食」という、宇宙飛行士が好きなもの、新鮮なフルーツ、「故郷の味」、を持ち込むことが可能となりました。

宇宙日本食の誕生 | ISS時代

ISSに日本人宇宙飛行士の搭乗が始まって以来、JAXAの前身であるNASDAで最初の宇宙飛行士の毛利さんや向井さんも
NASAかロシアの宇宙食を利用しており、日本食はわずかなボーナス食を利用しているに過ぎなかったそうです。
 

そんな状況の中で、「日本人の宇宙飛行士のために日本の食事を提供できないか」との話が持ち上がり、

「日本人宇宙飛行士が長期間宇宙に滞在すると精神的なストレスがかかり、
そのストレスを解消するには、日本食が欠かせない。そのために日本独自の宇宙食の開発が欠かせない」

 

宇宙飛行士の健康管理を行っている部署からそのような提唱があり、ISSの運用を行っている国際協議の場で提案し了承を得たとのことです!

しかし!NASDAでは宇宙食を製造する設備はないので、民間の食品製造企業に生産を委託することとしました。

NASDA(JAXA)は、宇宙食開発のバイブルである「ISS Food Plan」に合致するように宇宙日本食の認証基準を作成し、この基準に合格したものを宇宙日本食として認証することしました。

ISS Food Planとは?
ISSに参画している他の国でも
「自国の宇宙飛行士には自国産の食事を提供したい」という気運が盛り上がりました。

ISSの運用委員会のもとに、WG(ワーキンググループ)が設けられ、そこで各国の宇宙飛行士に提供する食事について解い一的な基準を設けることにしました。
この基準が「ISS Food Plan」であり、宇宙食の栄養基準、品質基準、衛生基準はもとより保存試験や輸送方法まで定められています。
このPlanに従えば、自国の宇宙飛行士に自由に自国のメニューを提供できます。

まとめ

宇宙食の歴史はいかがでしたでしょうか?

宇宙飛行のミッション達成のためには、
食事がいかに重要で考えなければならない課題として取り組まれていたかがよく分かりました。

宇宙での快適な食事生活を考えることで、
自ずと地上での安全安心な食事生活も開発されているところにとても感動しました!

私も、宇宙食の進化に貢献できる一人になりたいので、努力を続けていきます!

次回は、「宇宙食の役割と求められること」についてです!

乞うご期待!




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