宇宙食とは何か② | 宇宙食の役割と求められること編

宇宙食調査

前回、「宇宙食の歴史」について探り、宇宙食の進化に感動しました!

今回は、「宇宙食の役割と求められること」とは何かを調べてみました!

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宇宙食の役割

宇宙食には、下記のような役割があります。

宇宙飛行士の健康を維持するための栄養を確保する

精神的なストレスの低減・気分をリフレッシュ

パフォーマンスの維持・向上

その役割を全うするために、宇宙食には次のような様々な条件をクリアしないといけません。

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宇宙食に求められる条件

宇宙開発が進むにつれて、無重力でも人間は問題なく食べ物を嚥下できることが分かったおかげで、

チューブ入りや錠剤であった初期の宇宙食から現在のフリーズドライやレトルト食品へ進化していきました。(詳しくは宇宙食の歴史をご覧ください!)

しかし、嚥下できるからといって何でも地上から宇宙へ食べ物を持っていけるわけではなく、「無重量空間」であるが故に、宇宙食には求められる条件があります。

宇宙食に求められる物性

・適度な粘性
無重量空間で液体は容器からこぼれると玉になり、空間を浮遊します。

こぼれた飲み物が宇宙船の機器に触れたら、その水玉が機器の中に入り込み、故障の原因になってしまいます。

そのため、宇宙食には適度な粘性が求められます。

・匂いが弱いもの
今の宇宙船の中は狭小な密閉空間なので、匂いが他の人の迷惑になってしまいます。

そのため、匂いがきつくないものが宇宙食には求められます。

・砕けて飛び散りにくいもの
お煎餅やクッキーなどを食べると、細かいくずがこぼれることがありますが、

無重量空間ではそのくずが浮遊して、宇宙船の機械の中に入り込み、故障の原因になってしまいますので、

砕けて飛び散るくずが出にくい宇宙食が求められます。

・一口サイズで食べられるもの
宇宙食を喫食するときは、フォークとスプーンのみであり、ナイフはないそうです。

ナイフを使用して肉などをカットしようとすると、無重量空間では、お皿の上を滑ってしまうそうです。

そのため、一口で食べられるものが宇宙食に求められます。

・長期保存が可能なもの
宇宙食は、常温で少なくとも1年半の賞味期限を有することが求められます。

・高い衛生性のもの
宇宙飛行士の食中毒などを予防するために、食品内の細菌の種類や数などが基準以下とすることなど、
衛生性を確保できていることが求められます。

★宇宙食の包装にも条件あり!
宇宙食の容器や包装にも満たさなければいけない条件があるそうです!
・容器や包装が燃えにくいこと
・容器や包装が燃えた場合でも、人体に有害なガスが発生しないこと

宇宙環境が人体に与える影響と食事から予防できる栄養素

宇宙環境が人体に与える影響

無重量空間である宇宙での滞在が長くなると、人体の機能に様々な影響が出てくるそうです。

・骨の退化
人間の骨は皮膚などの組織と同様に代謝を繰り返しています。

運動による負荷がかかると、破骨細胞の働きで壊れ、造骨細胞の働きで新生されていて、
その新生量は、運動による負荷に左右されるそうです。

しかし、無重力下では、全く身体に負荷がかかりません
破骨量が少なく、骨の新生量はごくわずかであるために、骨はどんどん退化していくことになります…。

・筋肉の減少
骨と同様に、運動しないと、無重力下では筋肉も退化していきます。

筋肉を構成しているタンパク質は、常に分解と合成を繰り返し、その量が均等だと一定の筋肉量が維持されますが、
宇宙滞在が長くなると、そのバランスが崩れて、タンパク質の合成量が少なくなり、分解量が多くなります。

NASA の報告によると、1~2 週間の宇宙滞在において、
膝関節を曲げる筋肉の力が6%の低下を示し、膝関節を伸ばす筋では12%、腰を曲げる筋力においては実に23%もの低下がみられたとされています。

上記のような骨と筋力低下を防ぐために、
宇宙飛行士は宇宙空間において1日に約2時間も筋力トレーニングをしていると言われています。

★ルーの法則
19世紀後半から20世紀前半に活躍したドイツの発生学者ヴィルヘルム・ルーは、現代のスポーツ科学やトレーニング科学の基礎となる考え方を提唱しました。
それは、「身体機能は適度に使えば発達し、使わなければ萎縮し、過度に使えば損傷する。」というものであり、ルーの法則と呼ばれています。

・放射線の曝露
宇宙には「宇宙線」という放射線が飛び回っています。
その多くは太陽から放射され、放出された放射線は地球上にも降り注いでいますが、地球の大気のバリアによって、地上に届く放射線はわずかです。

しかし、宇宙空間を飛行する宇宙船の周りには大気が無く、放射線は宇宙船の壁もほとんどすり抜けてくるので地上に比べて多くの放射線を浴びることになり、
放射線を浴びると、人体の細胞内で「酸化反応」という細胞内の物質、遺伝子を損傷する影響が出ます。

人体に与える影響を予防する栄養素

上記で述べた宇宙空間での人体への影響は、食事によって一部回避できるため、
骨・筋肉の退化と酸化反応のスピードを緩和する「栄養素」を摂取することができる宇宙食が求められているそうです!

・骨の退化を予防する栄養素
カルシウム、ビタミンD、イソフラボン(ポリフェノールの1種)など

・筋肉の退化を予防する栄養素
アミノ酸、分岐鎖アミノ酸(BCAA)など

・酸化反応を抑制する栄養素(抗酸化物質)
セレン(ミネラルの1種)、ビタミンE、葉酸

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宇宙飛行士に求められる1日あたりの栄養

〇宇宙空間で過ごすために必要な1日の摂取カロリー
「ISS FOOD PLAN」という宇宙食の基準文書にある規定により、宇宙飛行士が宇宙に長期滞在する場合に必要とされる1日のカロリーは、
宇宙飛行士の年齢、性別、体重から算出されるそうです。

例)男性:30~60歳・体重60㎏ → 2678kcal

〇必要なタンパク質量
タンパク質は身体を保つために、必要な栄養です!

タンパク質の必要量は、摂取カロリーの12~15%の範囲と定められているそうです。
例えば、40歳男性宇宙飛行士の1日に必要なカロリーを2625kcalとすると、
その12~15%は315~394kcalであり、タンパク質量(4kcal/g)に換算すると、1日に必要なタンパク質量は78~98gです。
日本の食事摂取基準で推奨する18~64歳の男性が1日に必要なタンパク質量65gよりも多いです。

〇必要な炭水化物と食物繊維
・炭水化物の必要量は、摂取カロリーの50~55%が望ましいそうです。

例えば、40歳男性宇宙飛行士の1日に必要なカロリーを2625kcalとすると、
その50~55%は1313~1576kcalであり、炭水化物量に換算(4kcal/g)すると、1日に必要な炭水化物量は328~398gです。
このうち、砂糖などの糖類からの摂取は10%以下としているそうです。
日本の食事摂取基準では炭水化物は摂取カロリーの50~65%が望ましいとされています。

食物繊維の必要量は10~26gの摂取が望ましいとされています。
腸の環境を改善し、便秘を予防するためだそうです。
日本の食事摂取基準では食物繊維は20g以上と推奨しています。

〇必要な脂質量
脂質の必要量は摂取カロリーの30~35%の範囲としているそうです!

例えば、40歳男性宇宙飛行士の1日に必要なカロリーを2625kcalとすると、
その30~35%は788~919kcalであり、脂質量に換算(9kcal/g)すると、1日に必要な脂質量は87~102gです。

日本の食事摂取基準では脂質は摂取カロリーの20~30%の範囲よりも大きく逸脱しています。
これは、NASAが用意する食事は、欧米人の食事を基本としているため、宇宙食の栄養設定上、日本人にとっては脂質が多くなります

〇必要な水分量
水分の摂取は、腎臓機能の維持や脱水症状を予防するのに大切です。

必要な水分量は、摂取カロリー1kcalあたり1~1.5mlが望ましいとされています。
40歳男性宇宙飛行士の1日に必要なカロリーを2625kcalとすると、1日に必要な水分量は約2リットルです。

ただし、飲み物として水分を摂取しなくても、水分を含んだ食事から補えれば大丈夫そうです。

★腎臓の機能
腎臓は老廃物や余分な水分、塩分などを尿として排泄することで、体の中の水分量、ナトリウム・カリウムといったイオンバランス、
血液の酸性・アルカリ性を調節したり、体内を常に最適な環境にする機能があります。

〇必要なビタミン量(例:ビタミンDと葉酸の場合)
体重60㎏男性30~60歳の場合、
・脂溶性ビタミンのビタミンDの必要量が10μgだそうです。
日本人の食事摂取基準(18歳以上の男女ともに8.5μg)よりも倍近い量だそうです。
ビタミンDは骨の形成に欠かせないビタミンです。宇宙飛行士の骨形成を助けるために多くしてあるとされます。

・水溶性ビタミンの葉酸の必要量が400μgだそうです。
日本人の食人摂取基準(成人した男女とも240μg)よりも多いです。
これは、葉酸が放射線による体内酸化を抑制することが期待されているからです。

〇必要なミネラル量(例:カルシウム・セレン・ナトリウムの場合)
体重60㎏男性30~60歳の場合、
・骨形成を助けるカルシウムの1日の必要量は、1000~1200㎎だそうです。
(日本人の食事摂取基準では成人男性の場合、700~800㎎摂取することが推奨されています。)

・体内酸化を抑制するセレンの必要量は、70μgだそうです。
(日本人の食事摂取基準では18歳以上の男性の場合、30μg摂取することが推奨されています。)

ナトリウムの1日の必要量は、1500~3500㎎だそうです。
(日本人の食事摂取基準では、食塩相当量の目標値として成人男女ともに1日6.0g未満とされています。日本人の食塩の摂取量が宇宙食よりも多いことが分かります…!)

なので、今後、開発する宇宙食は、低塩のものが推奨されています!

まとめ

「宇宙食の役割と求められること」はいかがでしたでしょうか?

宇宙で食事をするには、人体の「安全・安心」のために、様々な制約があることが分かりました。

その上で、現在、宇宙食になっている食品は、その狭き門を潜り抜けてきたんだと、改めて尊敬します!

また、宇宙空間で必要な栄養は、人体の影響を限りなく抑制するために、
例えばカルシウムは地上で生活するのに必要な栄養よりも多く設定されているなどよく考えられているのですね!

そして、宇宙での健康な食事は何かを考えることが、地上での健康的な生活を見直すことにも繋がるという気づきを得られました。

では、そんな宇宙食には、どんなものがあるのか…次回は「宇宙食の種類」について調査いたします!

乞うご期待!




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