宇宙食とは何か④ | 宇宙日本食について

宇宙食調査

宇宙日本食の開発は、2003年からNASDA(後のJAXA)で開発が始まりました。
宇宙食の歴史についてはこちらからどうぞ!

2023年8月時点で、宇宙日本食の認証数は、52品目(31社/団体)と数多く開発されています。

私も宇宙日本食の開発を目指すために、その詳細を調査しました!

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宇宙日本食とは?

宇宙日本食は、「日本人宇宙飛行士の心と身体の健康をサポートする」というコンセプトのもと、

食品メーカーなどが提案する食品をJAXAが定める宇宙日本食認証基準を満足している条件で認証される宇宙食です。

宇宙日本食は、日本の伝統的な「和食」に限らず、カレー(SPACE CARRY)など日本の家庭で普段食べられているものまで対象範囲としているそうです。

日本人の馴染みある味を宇宙に提供できる…!

宇宙滞在のお供に、宇宙日本食があれば、地球にいる日本人から応援されているように気持ちになりそうですね!!

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宇宙日本食の栄養性

宇宙日本食のコンセプト

宇宙日本食のコンセプトである「日本人宇宙飛行士の心と身体の健康をサポートする」は、
日本人以外の宇宙飛行士と同様に、主に3つの宇宙環境への影響を軽減させることを望んでいます。
ISS滞在中の宇宙飛行士に必要な栄養の詳細は、こちらからどうぞ!

①筋肉と骨の退化の進行を遅らせる
→そのためには、特に「分岐鎖アミノ酸」と「カルシウム・ビタミンD」の強化を図るなど

②放射線被ばくによる影響を軽減する
→そのためには、「カロテノイドなどの抗酸化物質」の強化を図るなど

③長期間の閉鎖空間環境下での精神ストレス
→例えば、日本人に馴染みのある和菓子メニューなど

認証申請に必要な栄養分析値

ISS運用国際ワーキンググループが定めた「ISS Food Plan」の365日以内の宇宙飛行の栄養要求を日本人宇宙飛行士にも適用することとしています。
宇宙日本食がその栄養基準を満たすかは、認証申請食品に栄養成分分析値の提出が必要とのことです。

【提出すべき栄養成分】
〇一般成分
栄養性を判定するPFC比率を計算するために、水分・タンパク質・炭水化物の他、
脂質・灰分・エネルギーが必須のデータです。

★PFC比率とは?
PFC比率とは、食事の栄養性を検証する指標の一つです。
タンパク質(P)、脂質(F)、炭水化物(C)を計算すると、その各比率で3つの食事エネルギーバランスが分かる比率です。
最も生活習慣病になりにくいPFC比率は、P=16~17%、F=25~30%、C=55~60%とのことです!
★灰分とは?
灰分とは、食品中のミネラルの総量と考えられているものです。

〇ビタミン
・脂溶性:ビタミンA(レチノール)、α-及びβ-カロテン、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK
・水溶性:ビタミンB、ビタミンK

〇ミネラル
ナトリウム、リン、鉄、カルシウム

★宇宙食の低ナトリウム化
ナトリウムは高血圧を誘引することが知られています。
宇宙食では、低ナトリウム化が提唱されており、
ISS Food Planによれば1日に摂取するナトリウム量は1500~3500㎎とされているそうです。

栄養成分の測定方法

栄養成分の分析値を要求するに伴い、栄養成分の測定法にも基準が設けられているそうです。
各栄養成分の測定方法をいくつか例示します!

〇水分
・常圧加熱乾燥法:
通常の気圧下で水分の沸点である100℃付近で加熱し、加熱前と後での重量差から水分を求める。

・減圧加熱乾燥法:
乾燥器内を一般に1~10 kPaの減圧度にすることで、水分を蒸発させる方法。
※食品別に適切な方法を選択します。

〇タンパク質
ケルダール分解法:食品中の全窒素を測定する方法
※適用する食品別に窒素ータンパク質換算係数に規定があります。

〇脂質
酸分解・ソックスレー抽出法:
他の成分と結合している脂質を酸で分解させてから、ソックスレー抽出という食品から目的成分である脂質のみをエーテルなどの化学溶剤で溶解して抽出する方法
※食品別に適切な方法を選択します。

〇灰分
・直接灰化法:
550~600℃で直接空気中で熱することによって、有機物を全部除去して残存したものの送料を測定する灰分を測定する最も一般的な方法

・酢酸マグネシウム添加灰化法:
灰化前に酢酸マグネシウムを添加し灰化することにより、灰化時のリン酸の影響を少なくする方法。小麦などはリン酸を多く含む食品を灰化するとき、リン酸の影響で溶融が起こりますが、予め酢酸マグネシウムを添加することにより灰化時の溶融を防ぎます。

〇炭水化物
・差引法(100-(水分+タンパク質+脂質+灰分))

〇エネルギー(熱量)
・修正アトウォーター法:
エネルギーは科学的知見に基づき定められたエネルギー換算係数である、タンパク質:4 kcal/g、脂質:9 kcal/g、炭水化物:4 kcal/gをそれぞれの成分量(g/100g)に乗じたものの総和により算出されます。
熱量(kcal/100g) = タンパク質×4 + 脂質×9 + 炭水化物×4

〇ビタミン(A/D/E/K/B/C)・α-,β-カロテン
HPLC(高速液体クロマトグラフィー):
化学溶剤を使用して食品から目的成分のみを分離し、その量を測定する分析方法。

〇ナトリウム
原子吸光光度法:
食品中、他の原子とくっついているナトリウム原子を高温に加熱して単体の原子にしたナトリウムに光を照射したときに、その固有の光の信号を示す現象(原子吸光)を利用して、食品中に含まれるナトリウムの量を測定する分析方法

〇リン・鉄・カルシウム
・ICP発光分析法:高周波誘導結合プラズマ(ICP)を光源とする発光分光分析法

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宇宙日本食の嗜好性

官能評価方法

宇宙食はおいしくなければいけない!!
おいしさは、何人もの試験員が実際に食べる状態で試食する官能評価によって確かめます!

実際に宇宙船や宇宙ステーション内で食するのと同じ温度や状態で供試する必要があります。

〇缶詰・レトルト食品の場合
そのまま開封した後または、80℃の湯浴中で所定の時間加温した後に開封して供試します。
(↓若狭宇宙鯖缶の様子)

(↓ホテイ 宇宙食用やきとりの様子)

〇凍結乾燥品の場合
開封して所定の温度の水を加え、所定の時間置いて「水戻し」し、それが完了しているのを確認してから供試します。
(↓宇宙おにぎりの様子)

官能評価は、「外観・色・臭い・風味・食感」で評価されます。

物性評価

宇宙食は、直接ストローから飲む液体食品では問題ないが、レトルト食品のように袋の封を切って、
スプーンですくって食べる食品では、飛び散らないことが求められるため、宇宙日本食では「粘度の基準」を設けることとしています。

具体的には「B型粘度計」を使って、測定基準値が「6×10の3乗(mPa・s)」であることが基準だそうです!

宇宙食の先進国のNASAにはない基準であり、NASA宇宙食研究室の担当者が、スプーンですくって目視で判定しているとのことです!

他の物性評価は、触感(温度・重量)食事後の袋の中の残渣量を検査しているそうです!
特に残渣量が多いと宇宙船内の不要物が溜まってしまうので、宇宙食を開発するときは、その残渣を少なくできることにも気を配る必要があるんですね!

宇宙日本食の保存性

ISSの運用規定では、宇宙食は室温で9か月保存しても品質に変化がないことを求めています。

宇宙食は宇宙飛行士とともに宇宙に運ぶのではなく、別のロケットで事前にISSに届けられ、
日本から米国までの運搬機関、現地での検査・積み込み作業期間や、
何らかのトラブルで運搬ロケットがISSに到着しないときに残った食事として食べ繋げられるようにするため、
その時間が加算されて9か月となっています。

宇宙日本食では、ISSの長期滞在化に伴い、保存期間を18か月(1年半)としています。
認証を求める宇宙日本食候補品は、この期間の保存試験を行わなければなりません。

しかし、1年半の期間はカンタンではないため、「加速試験」という保存温度を高めに設定して期間を短縮ができます!
保存試験の保存温度は、22℃が基準だそうで、
加速試験は、35℃・2日間、30℃・6日間の耐暑試験と2℃・24時間の耐寒試験を行います。

この加速試験は、以下の想定です。
〇耐暑試験
NASA本部のあるヒューストンから打ち上げ既知のあるフロリダまでに保冷車が故障したときを想定。

〇耐寒試験
ROSCOSMOS(ロシア宇宙庁)から運搬中の事故を想定

保存試験を実施する際に想定すべきシチュエーションは、宇宙滞在中の保存状態だけではなく、
ロケットに運び込むまでの環境状況など、考えられるあらゆる状況を想定して、どんな状況でも安全・安心が担保されないといけないのですね…!

宇宙日本食の調理適合性

宇宙に持って行った宇宙食がISSに備え付けられた調理器(プレートヒーターと給水器)で「調理」できるかどうかの試験もあります。

「レトルト食品」であれば、プレートヒーターという加温器で温められるか、
「フリーズドライ食品」であれば、給水器で一定量の水またはお湯でしっかり復元するかなどを確かめます。

開発した通りの「見た目」になるか…この検査はドキドキしそうですね!

宇宙日本食のパッケージ

宇宙日本食のレトルト食品用パッケージやフリーズドライ食品用のパッケージなどの容器包装は大日本印刷(DNP)が開発しているとのこと。

開発当時、NASAの容器包装を分解、検査するとともに、NASAフードラボを調査して、DNPは独自開発に着手したそうです。

独自開発した容器の特徴として、例えばフリーズドライ食品用パッケージでは、

ストローのような「チューブ」を使用せず、「リポビタン JERRY FOR SPACE」のように「スパウト」と呼ばれるチューブよりも広めの飲み口が使用されており、

「スパウト」を使用することで「わかめスープ」などの具材が「チューブ」よりも食べやすくなります。

これは、NASAにはない日本独自のパッケージとのことです!

宇宙日本食の認証マーク

JAXAの審査により、宇宙日本食の認証を受けた食品のパッケージに「宇宙日本食」ロゴマークを使用することができます
ロゴマークは以下の2種類があります!

〇認証食品マーク(赤)

認証食品マークは、ISSに滞在する宇宙飛行士の食事として、宇宙日本食に認定された食品に使用することができるマークであり、
認証を受けた食品と同じ製法により製造されたものであれば、その製品が充填された容器そのものがISSに搭載するものと異なる場合でも使用できるマークとのことです。

〇搭載同等品マーク(金)

(↓宇宙ハンバーグ(コスモバーグ)のパッケージ)

(↓宇宙ちりめん山椒のパッケージ)

搭載食品マークは、ISS に滞在する宇宙飛行士の食事として、宇宙日本食に認定された食品であり、
かつ、食品の製法及びその製品が充填された容器そのものが、ISS に搭載されるものと同じである食品に使用することができます。

まとめ

宇宙日本食は主菜となる肉や魚料理、野菜料理など、まだまだ多くの種類を必要としているそうです!
宇宙食にはどんな種類があるかの詳細はこちらからどうぞ!

私も、日本人の馴染みあるチョコレートの味を宇宙日本食にしたいと考えているので、
その開発を実現に向けて努力を続けていきます!

さて、次回は、宇宙食はその先へ行く!「宇宙食の未来と災害食利用」をご紹介いたします!

乞うご期待!




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