チョコレートといえば、みなさんが最初に思い浮かべるのは、
ピカピカでキレイに固まっている板チョコレートではございませんか!?
でも、板チョコレートは、テンパリングという工程がないとピカピカの光るボディ~になりません!
・・・とか、ただ冷やして固めるだけでは上手く作れないのです!
今回は成型チョコレートのお話を、私の研究開発部での試作および製造ラインの経験談を中心にしたいと思います!
ご家庭で成型チョコを作るのに、参考になれば嬉しいです!
成型チョコレートとは?
成型チョコレートは、モールド(型)にテンパリングのとれた液体チョコレートを流し込み、冷却して固めます。
(みなさんの疑問)
え?簡単そうに聞こえますね…。
成型チョコを作る上で、注意すべきことはテンパリングだけですか!?
(Satoshi)
いえ!!!テンパリングだけではございません!!ここからは、私の経験談を含めて成型チョコレートの「コツ」を抑えてお話しますね!
成型チョコレートを作るコツ!?
モールドは予め温めること!
チョコレートのテンパリングをする前に、大事なことは、「予めモールドを約34℃に温めておくこと」です!
(みなさんの疑問)
え!?チョコレートは冷えると固まるから、モールドも冷やしておくのだと思ってました!
どうして温めておかないといけないのですか!?融けちゃいそう…
(Satoshi)
冷えたモールドにチョコレートを流し込んでしまうと、モールドの隅までチョコレートが行き渡る前に、チョコレートが固まってしまいます!汗
そうすると、冷却後にモールドから外すと、チョコが行き渡っていない分が空洞になってしまい、いびつな成型品になります。困
(みなさんの疑問)
なるほど!では34℃といわず、それよりも高い温度でモールドを温めましょうよ!!!
その方が安心ですよね?
(Satoshi)
ちょっと待って!!!
高温のモールドに、チョコレートを流し込んでしまうと、せっかくテンパリングで得たココアバターのⅤ型微細結晶が融けてなくなってしまいます!
そして、テンパリング状態が崩れたチョコをそのまま冷却すると、ブルームが発生した見た目サイアクのチョコが出来上がってしまいます…
(Satoshi)
モールドをテンパリングが取れた直後のチョコレートと同じ温度(約34℃)にすることで、
テンパリングで生まれたココアバターのⅤ型の微細結晶を維持しつつ、モールドの隅までチョコを行きわたらせることができます!
流し込んだらタッピング!
(みなさんの勢い)
約34℃に保温したモールドにテンパリングが取れたチョコレートを流し終えました!!
あとは、冷蔵庫に入れてっと…
(Satoshi)
ちょ、ちょ待てYO!!
その前に「タッピング」してから入れます!
「タッピング」は、モールドを乗せている台の上で、モールドを台に軽く弾ませるように小刻みに打つことです。
「タッピング」することで、自らの粘性だけではモールドの隅まで行きわたることのできなかったチョコレートも隅々まで行きわたりやすくなります。
それだけでなく、チョコレート中の気泡が外に出てきやすくなり、冷蔵庫で冷やすときに冷えやすくなります!
気泡は断熱性があるので、チョコレートの中にあると十分に冷却できなくなり、気泡の温かさでテンパリングが崩れて、後にブルームとなってしまうことがあります。
あと、固化後のチョコレートの外観が気泡の跡により損なう可能性があります。
(みなさんの勢い)
分かりました!タッピングも大事なんですね!!
(タタタタタタタタタタタタタタッ…!)
モールドの裏面を確認して上手く固まったことを判断する!
(みなさんのソワソワ)
今、チョコレートを冷蔵庫で冷却していますが、上手く固まったかどうかはどのように判断すればよろしいでしょうか?
(Satoshi)
ソワソワしますよね!でも大丈夫!しっかりチェックできる判断方法として、「モールドの裏面を見る!」があります!
テンパリングが取れているチョコレートは、冷却固化すると「収縮」します!
製造ラインで使用されるプラスチックのモールドは半透明が多いので、その裏面を確認するとチョコレートがモールドから「剥離された状態」が分かります!
ちなみに、冷却固化が不十分のときはモールドからの剥離も不十分です。
その状態でモールドの裏面を見ると、剥離している部分に比べて色が濃いのがはっきり分かるので、簡単に見極めることができます!
(みなさんの感動)
おぉ!見てください!チョコレートが全部モールドから剥がれてます!
モールドをひっくり返すと…チョコレートが出てきました!!!
チョコレートは室温に戻すときは、結露に注意!
(みなさんの落胆)
あれ!?ここまでちゃんと言う通りにしたのに・・・・
(Satoshi)
どうしました!?あ!!!これは…チョコレートが白くなってる!?
(みなさんのてへぺろ)
そうなんです…。冷蔵庫から室温にチョコレートを出した後、
安心して、ついついTwiterをチェックしてて…
(Satoshi)
これは、「シュガーブルーム」ですね!!!
チョコレートを冷蔵庫から暖かい場所に移すと、チョコレート表面が結露して、
チョコレートに含まれる砂糖が水分へと溶け出し、さらに水分が蒸発すると、砂糖がチョコレートの表面で結晶化します…!
(Satoshi)
シュガーブルームを予防するには、チョコレートを冷蔵庫から室温に出した後に、ラップやアルミ箔で覆いかぶせると、上手く結露を避けられると思います!(経験談)
現在のモールドは、半透明のプラスチック型が使われています。
しかし、昔は金属型のモールドが主流で、金属型は重くて騒音もひどく、高価であったそうです。
しかし、数千枚が必要とされる製造ラインでは適さなくなり、現在では軽く騒音の少ないプラスチック型になっていったそうです。
プラスチックの利点はもう一つあり、チョコレートをモールドから剥離時にモールドに衝撃を与えずに剥離させる方法として「捻り」を行えられるところです!
成型チョコレートのメリットとデメリット
メリット
成型チョコレートのメリットは、複雑な立体をかたどれるところと、同じサイズ(重さ・大きさ)を大量生産しやすいところだと思います!
もし、自分だけのモールドを作ることができたら、オリジナルのカタチのチョコを量産できるというワクワク感もあります!
また、サイズ・重さが同じチョコレートが作れるというのは、成分の違いや分量で風味がどのくらい変わるかなどのチョコレートの研究をする上で、とても助かります!
デメリット
成型チョコレートは、複雑な立体を可能にするモールドが「専用で」必要です。
しかも、そのモールドの枚数は、製造ラインでは数千枚以上必要なので、コストがかかりやすいと思います。
また、洗い物の量が多いので、後片付けとモールドの収納が大変でした…!
最後に
私は「素早く!丁寧に!適量で!」を心がけて成型品チョコレートの試作を行っておりました(;’∀’)汗
モールドにチョコレートを流しすぎると、溢れたチョコレートをパレットナイフでかきとる手間が増えるだけでなく、チョコレートで服や手を汚してしまいます…。
また、テンパリングがとれたチョコレートはその時点から固化が始まるので、すばやくモールドに充填し終えないと、上手く成型できません。
前職の同僚だったパティシエさんに、「お菓子作りは、器具を含めてなるべく汚さないこと」がかっこいいと教えてくれたことがあります。
みなさん、参考にしていただけたら嬉しいです!!
次回のお話
チョコレートの末端の製造方法、レボルビングパン、生チョコレートなどまだまだ経験則から苦労話まで盛り込んで紹介していこうと思います!
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